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最期の始まり

その日は、冬の寒さが厳しくも、よく晴れた日だった。
珍しく朝に目覚め、陽光を浴びながら、色彩の薄い庭を眺める。
今日は何かあったかな、と考えているうちに一つ、咳払いをした。
それまで、何一つ予感は無かった。
だからこそ、風月は袖と唇を塗らした鮮血に、久方の驚愕を憶え。
そこから連続する激しい咳と、急激に失せる血の気に、意識を絶やした。



酷く懐かしい 感覚
また味わう 事に
今 か
今なの か



次に目覚めた時、昼を少し下っていた。
朝の日差しが嘘のように鼠色の雲が覆い、雪が降り出しそうに重い気圧が降りていた。
傍らには従者。
「小雑賀、か」
風月は名を呼び、従者は意識の回復した主を見つめる。
「若様、身体は如何ですか」
「真綿に包まれたようだ。何もかもが気怠い」
「血の気が足りないのでしょう。随分と吐かれたようですから」
そう、か。そうだろうか?
何もかもが澄んで美しく見える。
布団から出した己の腕が、己の物ではないようだ。
自分が、自分でなくなっていくこの感覚。

嗚呼、来たのか。
「小雑賀」
今、此処で。
「私はもうすぐ死ぬ」
永代の別れが、来る。



寿命百余年の、九尾の一族。
それが三百年、冥府で佇み続けた。
肉体は蘇った物としても、魂に三百年の重みが確実に降り掛かる。
朽ち掛けた魂は、崩れる。
崩れた物は、戻らない。


最期の一欠けらが、今、塵になろうとしている。

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2010.01.04 | | Comments(0) | Trackback(0) | 未分類

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